企業から生活者へのコミュニケーション方法が多様化する中、企業や自治体による「ブランデッドムービー」「ブランディングムービー」の制作が活発になりました。5Gの普及に伴い、動画消費が加速するなか、今後もこの流れは続いていくことが予想されます。
◆ブランデッドムービーとは？
ブランデッドムービーとは、ブランディングを目的とした映像・動画のことです。
企業の商品やサービスを直接的に宣伝する動画広告とは異なり、認知度の向上や、企業の持つ思いに共感してもらうことを目的とします。
数分から数十分程度の短い映像ドラマを通じて、その企業・商品ブランドの「ファンを増やす」ことがゴールです。
長期的な視点で考えると、「企業・商品ブランドのファンを増やす」ことはマーケティング戦略の中でも最も重要な課題の一つです。
そのため、ブランデッドムービー制作に多くの企業が取り組んでいます。
今回は、企業や自治体が制作した「ブランデッドムービー」「ブランディングムービー」のうち、特にストーリー面で優れた事例を紹介します。
❶早稲アカブランドムービー「へんな生き物」篇
こちらの動画は、早稲田アカデミーのブランデッドムービーです。子どもならではの「変な行動」をする息子を、母のあたたかな視点から描いています。一見、理解に苦しむ行動を繰り返しているように見える息子ですが、実は理由があり、息子は「宇宙飛行士」を目指して様々なことに興味を持っていたことが明らかになります。
これは、家族（母、息子、姉）を描くことで、学習塾のターゲットとなる親世代の視聴者層に刺さる内容になっています。さらに、このブランデッドムービーには、「なぜ、変なことをしているのか？」という謎を前半で提起し、後半で「宇宙飛行士」という答えを見せる、ミステリー的な面白さがあります。
❷佐賀県上峰町ブランデッドムービー「あたらしいふるさと」
こちらは、佐賀県上峰町のふるさと納税のブランデッドムービーです。東京から引っ越してきた母と息子が描かれます。
母親は、息子に友達ができるか心配していますが、実は母親の方が周囲に溶け込むことができず、子供が投げたボールをきっかけに、友達ができていくという物語です。街の風景だけではなく、母や息子の表情や細かい仕草などにも、見応えがあります。慣れない土地で新たな関係性を模索する親子を、リアリティを持って描きつつ、ラストには心がじんとする仕掛けがあります。
❸ティファニー×ゼクシィ「TIFFANY BLUE」第3弾
3本目は、ティファニーとゼクシィとのコラボムービー。
日々の忙しさで少しずつすれ違いが生まれていく恋人同士を、台詞をほとんど使うことなく、コーヒーカップに描かれた絵という小道具をフル活用して描いています。
ここぞ、というクライマックスで置かれるティファニーの箱が際立つ、身近な悩みを描きながらも美しく仕上がったムービーです。
❹東京電力ホールディングス・フウカとハヤトの物語 『フウカの決心』編
タイムカプセルを掘り出す幼馴染の高校生男女の青春ストーリーから、「変わらないものを守る」というコンセプトを導き、「カーボンニュートラル社会を目指す東京電力の取組み」を伝えるという構成。企業として伝えたいメッセージから少し飛躍したところで、あたたかな青春ストーリーを生み出しているのが特徴です。
❺ポカリNEO合唱 ボクらの夏 バックストーリー
ポカリスエットCMのバックストーリーとして制作されたこちらの作品。CMに出演する高校生たちが、コロナ禍のなかどんな思いでいたのか、それぞれの語りを通して思いが視聴者に伝わるつくりとなっています。語られる思いに感情移入させ、CM撮影で思いを弾けさせる流れの作り方が巧みです。
❻武蔵境自動車教習所 ブランドムービー「たまみとおじいちゃん」
主人公のたまみとおじいちゃんとのドライブの思い出から、たまみが免許を取得し、おじいちゃんの車を彼女が運転してドライブに連れ出すところまでを描いています。始まりと終わりがたまみとおじいちゃんの物語になっているだけでなく、教習所で上手く運転できず躓いてしまったたまみが、もう一度前向きになるきっかけもまたおじいちゃんとの思い出、になっているところに工夫を感じます。
◆まとめ
ブランデッドムービーには、従来のCMの要素だけではなく、映画やドラマのような共感性を持たせることができます。そして、そのイメージが視聴者に伝わり、企業のブランディングに繋がっていくのです。
ブランデッドムービーを効果的に届けるには、何より重要なのはストーリーです。
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